従来の入れ歯は、ブリッジにせよ、部分入れ歯にせよ、残存歯(残っている歯)に支えられている。ブリッジは両隣の健康な歯にかぶせることで、固定されている。部分入れ歯では、バネを他の健康な歯に引っかけて支えられる。しかし、MTコネクターは残存歯に支えられる構造にはなっていない。金属の部分が、歯の裏側の歯ぐきの粘膜に支えられるようになっている。ちょっと見では安定性が悪く、すぐに外れるように見えてしまう。「この構造で、なぜ外れないのだろうか?」読者にも、私と同じ疑問を持った方がおられるだろう。「そう思われるかもしれませんが、まったく逆なのです」待ってましたとばかり、先生が身を乗り出す。「歯の裏側には、ある決まった角度、決まった方向、決まった力ではめ込むと絶対に外れない場所があります。MTコネクターをある決まった角度、決まった方向、決まった力でその場所にはめ込むと、ピッタリ収まって外れないのです。しかし、別のある方向に引くと、簡単に外すことができます」この先生の説明を聞いても、私にはなかなか理解できなかった。おそらく読者もそうだろうと思う。ここはMTコネクターの重要なポイントでもあり、もう少し詳しい説明を先生にお願いした。「人間の口の中には、ピッタリ入れると絶対に外れない場所があります。まあ、口の中のブラックホール的なポイントと言えるかもしれません。ものを噛んだり、話したりするときの口の動きは、上下、左右、前後とだいたい決まっています。これを生理的動きとすると、口の中のブラックホール的なポイントは、生理的動きの影響を受けません。生理的動きの盲点をついていると言っていいでしょう」いわば、MTコネクターは「外れようがなく、しかも取り外しのできるカギのポイント」に装着する。だから、食べたり話したりしても外れず、外すときは簡単に外すことができる。「一人ひとりの歯ぐきの形は違いますから、そのカギの発見がポイントです。歯が抜けたあとの歯ぐきの面を細かく拡大鏡で読み取って、その方のカギを探ります。MTコネクターではここが最も重要なポイントで、神経を使うところです」ブラックホール的なポイント、カギ……。理解しやすくしようと、先生は考えた言葉を使う。たとえば、知恵の輪でも同じようなことが言える。なかなか外せない知恵の輪でも、ある方向へ、ある角度で引くとあっさりと抜ける。入れるときも、ある方向から、ある角度で入れないと絶対に入らない。MTコネクターをつけるとき、その方向と角度を合わせればスッと入る。しかし、食事をしても、話をしても、その場所は筋肉などの影響を受けないから外れない。外すときは、その方向と角度を合わせればいとも簡単に外れるということである。