お母さんたちの受けた英語教育が、あまりにも文完結型、ことば偏重型であったことを物語っています。こちらのお母さんも自分の日本語での会話風景をビデオで録画してみると更に分かります。フォーマルな状況ではなく、家族や親しいお友達とのカジュアルな会話です。ただし電話の会話はダメです。というのは、電話は基本的に音声言語ですべて伝えることを前提としていますから。ごく親しい人たちと、目で見て、触れて、音が聞こえて、臭いを嗅いで、味わえて、なんでも近くにあって、慣れ親しんでいる、という状況のビデオです。これが本当にカジュアルな状況です。ことばで全部を説明する必要のない状況で、5歳のお子さんが一番安心できる状況なのです。一方、このお子さんがすべて目新しく、親しい人も物事もなにもない状況に置かれると、パニック状態になり会話どころではありません。大人でもそうです。まったく親しみのない外国にぽつんと住むことになったらとても寂しくなり、とたんにホームシックになります。5歳の子どもは両親や兄弟姉妹との親しい環境がゆるぎないものとして安心しており、これから外に少し関心を持ってちょっと窓越しに外を見ているような状態です。このようなカジュアルで緊密な状況は、物事がかなり予測できるもので、「ハイ・コンテクスト」な状況と言います。いるだけで見て聞いて触れて味わって臭いを嗅いで多くのことが理解できるし伝達できるのです。ことばに極度に依存するのではなく、状況に依存します。ですから、ことばは文完結型ではなく、1語、2語が飛び交います。慣れ親しんでいる状況のなかでも、語で表されたものに注目してもらいたいという意味です。